第4章 5話
そして・・・

かつて経営危機と倒産の悪夢にさらされたポルシェ社は、キレ者であるヴィーデキングの采配の元、メキメキと売り上げを伸ばしている。
現在でも現役の社長として就任している事を考えると、その任期の長さは異例であり、それだけやり手である事は疑う余地は無い。

しかし、現在のポルシェ社のラインアップにはL4ポルシェの姿は無い。

L4ポルシェというのは何だったのだろう?

よく言われている様に、ポルシェ社のお荷物、鬼子だったのだろうか?

時代に対応させようとして、ポルシェ社が苦肉の策で送り出した「失敗作」だったのだろうか?

それとも、現在のポルシェ社の栄光を導く「捨て石」だったのだろうか?

一つだけ言えることは、L4ポルシェがポルシェ社に存在していたと言うことは、決して「無駄」ではなかったと言う事だ。
現に、現在の911である996や、ボクスターなどは、928やL4で培った技術を使って「水冷化」されているのだ。

ここで一度、『未来』を見てみたいと思う、『想像』でも構わない。
今まで私の続けた『過去』の話より、現在を飛び越えた先に皆で行ってみたい。

一人の男性が、一件の本屋に入って行く、それが「若い」男性なら、ひょっとしてあなたのまだ見ぬ息子さんかも知れない。
自分より上の年齢の方ならば、それはあなたの数年後の姿かも知れない。

彼は一冊の本を手にした、それは、ポルシェの歴史に関して書かれている本である。

ページを進めて行くと、そこにはL4ポルシェについて書かれている記述があるようだ。
少し、内容に目を通してみよう・・・

・・・20世紀後半、マスキー法とオイルショックの狭間に立ったポルシェ社は、落ち込むスポーツカー市場の生き残り策として、 水冷直列4気筒エンジンをFR駆動にした、新しい時代のスポーツカーの生産に着手した。
924と呼ばれるそれは、時代のニーズに合わせて、944、968と進化を遂げ、かつては911を向うに追いやるほどの勢力を誇っていたが、 日本車の急速なパワーアップに伴い,次第に競争力を失っていった。
そして、新世代のスポーツカー、ボクスターに代わる事になったが、これら直列4気筒ポルシェの現在の評価として・・・

・・・あっ、見えなくなってしまった・・・

しかし、これを見る必要は無いだろう。
L4ポルシェの「未来」の評価を決めるのは、他でもない、現在の我々なのだから・・・

我々がどの様に評価するか、どれだけ多くの人に良い評価を植えつけられるかで、これからのL4ポルシェの評価は決まってくるのだ。
それは、まだ遅くはないはずだ。

最後に、評価の参考として、世界的に有名なモーター・ジャーナリストで、かつてのグランプリ・レーサーでもあった、 ポール・フレール氏の言葉を引用させてもらおう。

「ポルシェが作った物に、間違いは無いのだ・・・・・」


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